2012年1月29日日曜日

ナラティブ・メディスン―物語能力が医療を変える


 著者によれば、ナラティブ・メディスン(物語医療学)は、ナラティブ・コンピテンス(物語能力)を通じて実践される医療と定義される。病いの物語を認識し、それを読み取り、解釈し、それに心動かされるという、ナラティブ・スキル(物語技能)を用いて実践される医療である。そして、物語能力は、精密読解、パラレル・チャートなどの方法を通して磨くことができるという。
 本書の核心は、医療における関係性、臨床実践を、語り手と聴き手(あるいは著者と読者)の関係として捉えるところにあると思う。それは、語り手と聴き手の間の相互作用的で協働的なプロセス、共同生成する対話のプロセスである。物語能力を磨くことで、患者の病いの物語を満たす容器(flask)となり、自分自身を治療手段として用いることができるようになるという。
 臨床家として、学ぶところが多いと思う。


ナラティブ・メディスン―物語能力が医療を変える
Rita Charon
医学書院
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